NOVEL

宇宙のひとり旅

 宇宙へ旅立った先輩からの連絡は、どんどん時差が出来ている。今日、半年前のビデオメッセージが届いた。

「トラブルで食糧庫がダメになった。でも、なんとかする」

 今頃どうしてるだろう?

 一年後。

「久し振り!」

 先輩の隣には、いわゆる宇宙人がいた。相変わらず、人と仲良くなるのが得意らしい。

死後の世界

 月に照らされた先輩には、影がない。ホログラムだからだ。

 幽霊みたいと人は言う。亡くなった先輩の脳から作り上げられたAI。

 私が好きだった先輩は、もうこの世にはいない気がする。それでも、AIの先輩とは良い関係でいたい。

「君のこと好きだよ」

「私も好きです」

 今になって両想いだと分かるとは。

忘却薬

いずれ取り残される

「この薬を飲めば記憶が消せる」と言われた。

 私と先輩の思い出を消去すれば、ふたりの繋がりはなくなる。先輩はレジスタンスの一員で、私に迷惑がかかるだろうから、という話だった。

 圧政に立ち向かえる先輩は、強い。

「私は、あなたの隣にいたいです」

 そう告げると先輩は困り笑いをした。

 枯れない花を作ろうと思った。
 先輩が余命宣告されてから、もうだいぶ経つ。
 私は不死の研究を進めている。
 失敗続きだったけれど、ようやくそれは完成した。 「鎮痛剤です」  私は、嘘をつく。先輩は、それを飲み、不死になった。そのことに気付かれたら、先輩は私のことを恨むだろうか? それでもいい。

機械じかけの恋

おはよう

 先輩がタイムマシンに乗って、未来へ旅立った。百年後に行くらしい。
 帰って来るなり、先輩は言った。 「百年の恋も冷めないみたい」  実は、先輩はアンドロイドである。未来でも私のことが好きなんだそうだ。私は、もう死んでいるだろうに。 「その恋、消してしまわないんですか?」  ぽつり、と呟いた。
 コールドスリープから目覚めると、百年経っていた。
 家族や友人は、みんな亡くなっている。
 私の病は治療され、完治した。
 日々を何とか過ごしていると、今は亡き先輩から、荷物が届く。箱を開けると、ボイスレコーダーが入っていた。 「久し振り。元気になった?」  懐かしい先輩の声に、私は涙を流した。

 本物の動物を見たことがない。

 先輩にそう言うと、「飼ってる猫を見せてあげる」と言われた。

 先輩の家に行くと、黒猫が寝床でくつろいでいる。

「可愛いですね」

「撫でてみなよ」

 私は、言われたように、おそるおそる猫を撫でた。ふわふわの毛並み。確かにある体温。私のペットの機械猫とは大違いだ。